ここは本当に、産婦人科クリニックなのでしょうか
鶴の蓋をそっと開ければ子持ち昆布の奉書巻き、松葉に見立てたお蕎麦の上にはいが栗と紅葉の吹き寄せ、土鍋の蓋を開ければつやつやの白いごはん——。料亭の会席と見まがうこのお膳は、産婦人科クリニックの3階、ご出産を終えたお母様のために調えられた一皿一皿です。
藤東クリニックは「病院らしくない病院」を目指し、ホテルの設えのような空間づくりと、女性の楽しみのひとつである「食」へのこだわりを大切にしています。併設レストラン「Porte Bonheur(ポルト ボヌール)」——フランス語で"幸福の扉"を意味するこの場所では、その季節にいちばん美味しい食材を厳選し、食の安全安心をモットーに、心を込めたおもてなしをご用意しています。
10月、暦の上では「神無月(かんなづき)」。全国の神様が出雲に集まり、各地を留守にする月——そんな言い伝えから、この名がついたともいわれます。山々が色づきはじめ、栗や柿、さつま芋、そして新米と、実りがいっそう豊かになる季節です。今月の御祝会席は、秋風に吹き寄せられた木の葉や木の実の景色を写した「吹き寄せ盛り」を主役に、新しい命の誕生を実りの秋の恵みでお祝いします。ご家族様もご一緒にお召し上がりいただける、今月の献立をご紹介いたします。

2026年 神無月 御祝会席 献立
- 椀物 秋鮭摘入れ 白髪葱 叩きオクラ 柚子
- 前菜 栗白秋寄せ/茄子の萩豆腐/鯖小袖寿司/海老蓑揚/子持ち昆布奉書巻き/幸福玉子
- 造里 炙り鰹の焼霜 鯛の昆布〆 地蛸 あしらい一式
- 煮物 里芋饅頭 たもぎ茸と蟹餡掛け いくら
- 強肴 吹き寄せ盛り 黒毛和牛・太刀魚炭火焼/いが栗/紅葉麩/筆茗荷/松葉蕎麦/蓮根煎餅/丸十レモン煮/鶏松風/柿グラタン
- 飯物 土鍋めし 小吸物 漬物盛合わせ
- 甘味 焼芋テリーヌ
- カフェインレス珈琲
椀物 ― 秋鮭摘入れ 白髪葱 叩きオクラ 柚子
紅葉の絵柄が映える黒塗りの蓋を開けると、ふわりと立ちのぼる湯気。生まれた川へ秋に帰ってくる鮭は、北海道では「秋味(あきあじ)」とも呼ばれる、この季節ならではの味わいです。その秋鮭をふんわりとした摘入れに仕立て、まろやかなお汁に浮かべました。人参の朱色、とろりと粘りのある叩きオクラの緑、細く細く切りそろえた白髪葱。柚子の香りがふっと立って、お腹の中からじんわり温まるひと椀です。


前菜 ― 鶴の蓋の下に、秋の宝箱
黒と生成りの絵付けの角箱に、六品の秋を詰め込みました。まず目を引くのは、つるりと白い鶴の蓋物。そっと蓋を開けると、子孫繁栄の縁起物・子持ち昆布が、白い奉書に見立てて上品に巻かれて顔をのぞかせます。
となりには、その名も「幸福玉子」。とろりと流れ出しそうな半熟の黄身に、黒ごまをひとつまみ。お店の名前「Porte Bonheur(幸福の扉)」とも響き合う、うれしい名前の一品です。脂ののった鯖を酢飯に重ねた「鯖小袖寿司」は、着物の袖「小袖」を思わせる小ぶりの押し寿司。細く切った衣をまとわせた「海老蓑揚」は、昔の雨具・蓑(みの)に見立てた揚げ物です。
縞模様の角小鉢には、栗をたっぷり寄せた「栗白秋寄せ」。「白秋(はくしゅう)」は、秋の別名です。秋の七草のひとつ・萩の名を冠した「茄子の萩豆腐」には、つややかな小豆をちょこんと。料理の名前にも、秋の言葉がたくさん隠れています。









造里 ― 炙り鰹の焼霜 鯛の昆布〆 地蛸
細長い白い器に、秋の海の恵みを。秋に南へ下る鰹は「戻り鰹」と呼ばれ、春の初鰹よりも脂がのって、まろやかな味わいです。その皮目だけをさっと炙って香ばしさを閉じ込める「焼霜」に仕立てました。昆布の旨みを移した鯛の昆布〆、やわらかな地蛸を添えて。紫の花穂、オレンジ色のより人参、緑の柑橘があしらいの彩り。透きとおるつまの上に、小さな秋の景色が広がります。


煮物 ― 里芋饅頭 たもぎ茸と蟹餡掛け いくら
青い絵付けの蓋物を開けると、とろりとした餡の中から、まあるい里芋饅頭が顔を出します。秋に旬を迎える里芋をなめらかにつぶし、ふっくらと丸めたお饅頭。蟹の身をたっぷり含んだ餡には、黄金色の傘がひらひらと美しいたもぎ茸を合わせました。宝石のようないくらと、いんげんの緑をのせて。とろみのあるやさしい味わいが、産後のお身体をじんわりと温めてくれます。


強肴 ― 秋風が運んだ、吹き寄せ盛り
御祝会席のメインディッシュは、和食ならではの「吹き寄せ盛り」。秋風に吹き寄せられた木の葉や木の実の景色を、ひと皿の上に描く盛り付けです。草花の絵付けの白い大皿に、揚げたお蕎麦を松葉に見立てて敷き、その上に秋の野山の恵みを散らしました。
黄金色の細い衣をまとった「いが栗」、色づきはじめた葉のように赤と緑のグラデーションが美しい「紅葉麩」、さつま芋の黄色が鮮やかな「丸十レモン煮」、翡翠色の銀杏。銀色に輝く太刀魚は、くるりと巻いて炭火でこんがりと。けしの実をまとった鶏松風、桃色の筆茗荷、香ばしい蓮根煎餅も添えて。しっとりロゼ色に焼き上げた黒毛和牛には、照りのあるソースと粒マスタードを。白いココットの中では、9月に続いて登場の柿グラタンが、こんがりと焼き色をつけています。








飯物 ― 土鍋めし 小吸物 漬物盛合わせ
御祝会席のクライマックスは、目の前で蓋を開ける土鍋ごはん。10月は新米の季節です。今月は具を入れず、炊きたての白いごはんそのもののおいしさを味わっていただく「土鍋めし」に。蓋を持ち上げると、湯気とともにつやつやのごはんがふっくらと顔を出します。金色の蓋の小吸物と、胡瓜や人参など彩りの漬物盛り合わせを添えて。木杓子でよそうひと膳が、なによりのごちそうです。



甘味 ― 焼芋テリーヌ
食後のお楽しみは、秋の味覚の代表・焼き芋を、なめらかなテリーヌに仕立てた一品。焼き芋ならではの香ばしい甘さが、しっとりと口の中でほどけます。ひんやりとしたアイスクリームと青紅葉を添えて。「PORTE BONHEUR」のチョコレートプレートが、特別な一皿であることをそっと告げます。
お飲み物は、授乳中のお母様にも安心してお楽しみいただけるカフェインレス珈琲。秋の夜長に、ゆっくりとしたひとときを。



新しい命とともに迎える、はじめての紅葉の季節に
椀物から甘味まで——お膳の全景をご覧いただくと、10月の御祝会席がひとつの「実りの秋の物語」になっていることがお分かりいただけるはずです。紅葉の蓋の椀物、鶴の蓋の前菜、秋風が運んだ吹き寄せ盛り、土鍋の白いごはん、焼芋テリーヌ。色づく日本の秋を、一皿ずつ丁寧に紡ぎました。



御祝会席は、ご出産を頑張られたお母様への、私たちからの心からの「おめでとう」です。ご家族様とご一緒に、赤ちゃんの誕生を祝う思い出の一コマになれば、これほど嬉しいことはありません。赤ちゃんと迎えるはじめての秋が、紅葉のようにあたたかな彩りに満ちたものでありますように。
藤東クリニックは、女性のライフサイクルに寄り添った医療を目指し、医療施設としての機能はもちろん、女性視点に立った空間づくりや食のホスピタリティを大切にしています。FUJITO Galleryの写真から、当院の空気感を感じていただき、「ここでお産をしたい」と思っていただけたら幸いです。
Porte Bonheur——幸福の扉は、いつでも皆様のために開かれています。








