春の足音を、一皿にのせて。厨房で紡がれる、静かで温かな「幸せ」の物語

暦の上では春を迎えましたが、広島の空はまだ冬のコートを手放せない冷たさを帯びています。
けれど、藤東クリニックのレストラン「Porte Bonheur(ポルト ボヌール)」の厨房には、ひと足早い「春」が静かに満ちていました。

白い湯気の向こう側にあるのは、これから母となる方、そして新しい命を迎えられた方のための、心尽くしの風景です。

寒さと温もりが交差する、滋味深い時間

厨房に響くのは、トントントンと野菜を刻む小気味よい音と、コトコトとスープが煮える穏やかな音。
まるで音楽のように重なるその音色は、これから始まる幸せな食卓へのプレリュード(前奏曲)のようです。

2月の食材は、厳寒の土の中で甘みを蓄えた根菜たちと、少しずつ顔を出し始めたほろ苦い春の芽吹きが主役。
シェフたちは、その二つの季節の境目を、繊細な手つきで一皿に表現していきます。

派手な演出は必要ありません。ただ、素材の声に耳を傾け、一番おいしい瞬間を逃さずに閉じ込めること。
その静かなる集中力が、お産を終えた身体に染み渡る「滋味」を生み出すのです。

「幸福の扉」を開く、香りと彩り

ふわりと漂う出汁の香り、そして焼き上がったばかりのパンの芳ばしさ。
厨房から漏れ出す香りは、それだけで心が解きほぐされるような優しさを持っています。

ダイニングを彩る季節の生花もまた、料理の一部です。
目には鮮やかな彩りを、舌には旬の喜びを。
五感すべてを通して「おめでとう」の気持ちを伝えることこそが、私たちが大切にしているホスピタリティです。

ここでの食事が、慌ただしい日常に戻る前の、穏やかで美しい「栞(しおり)」のような時間になりますように。
厨房スタッフ一同、一皿一皿に祈りを込めて、皆様をお待ちしております。

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