ふだんは見えない、「おいしい」の舞台裏へ
テーブルに運ばれてくる一皿の、その手前。広島県安芸郡府中町の産婦人科・藤東クリニック併設レストラン「Porte Bonheur(ポルト ボヌール)」の厨房では、今日も朝から手仕事が続いています。8月の厨房から、ふだんはお見せすることのない調理風景をお届けします。

「幸福の扉」の、その奥で
Porte Bonheurは、フランス語で「幸福の扉」。ご出産を終えたお母様の御祝会席から、入院中の毎日のお食事、3時のおやつまで、このレストランの厨房がひと品ずつ手づくりしています。食のホスピタリティは、当院が大切にする医療のかたちのひとつ。その心臓部が、この厨房です。
ステンレスの厨房に、葉月の活気

磨き込まれたステンレスの調理台に、鍋の音、換気扇のうなり。白衣に帽子のスタッフたちが、それぞれの持ち場で黙々と手を動かします。

調理台をはさんで、ひとりは白い生地を手のひらで丸め、ひとりは食材の下ごしらえ。言葉少なでも呼吸の合った連携は、毎日いくつもの御膳を同時に仕上げる、このチームならではです。
手仕事のクローズアップ
青瓜が、稲妻になるまで ― 雷干し

厨房の一角に、するすると揺れる薄緑のらせん。今月の御祝会席の前菜「蟹と青瓜の雷干し」の仕込み風景です。青瓜を細長くらせん状にむき、フックに吊るして干す――その形が稲妻に似ていることから「雷干し」と呼ばれる、夏の技法です。


一本の瓜が、切れることなく長いらせんに。むき上がりを確かめるまなざしは真剣そのものです。この手仕事が、あのコリコリとした独特の歯ざわりを生みます。
地穴子を、一皿ずつ

こんがりと炙った瀬戸内の地穴子に、すっと包丁を入れて。切り分けた身を器に移し、白髪葱と青紫蘇をトングでそっと重ねます。


指先とトングを使い分けながら、一皿ずつ薬味の高さをととのえる。写真の一皿の向こうに、この繰り返しがあります。
魚は、下ごしらえが命

トレーには、昆布の上にきれいに並んだ白身魚。身を美しく折りたたみ、ひとつずつ形をととのえてから炊き上げます。毎日のお食事の主役「白身魚の姿煮付け」は、この丁寧な下ごしらえから。

寄り添う豆腐も、同じ大きさに切りそろえてスタンバイ。脇役にも手を抜かないのが、この厨房の流儀です。
ジュレと、緑のソース

タッパーの中できらめく、黄金色のジュレ。スプーンでほぐせば、涼を運ぶ夏の一皿の準備が整います。

小さなボウルでは、鮮やかな緑のソースを丁寧に混ぜ合わせて。かたわらには、赤や黄色の彩り野菜がカットを終えて出番を待っています。
出汁の香りと、土瓶のスタンバイ

青い炎の上、雪平鍋の中で琥珀色の出汁がゆらゆらと温まっていきます。厨房に立ちのぼる、かつおと昆布のやさしい香り。

カウンターには、籐の持ち手の土瓶がスタンバイ。今月の御祝会席の締め「地穴子炙り 茶漬け仕立て」で、熱々の出汁を注ぐあの土瓶です。

炙り穴子と彩り野菜が、盛り付けを待つトレーの上に。ここから一皿ずつ、御膳のかたちになっていきます。
見せる厨房に、つまった想い

厨房の飾り棚には、白い書の文字が流れる黒い炭火コンロ。あたたかな間接照明に浮かぶ姿は、道具でありながら、まるで工芸品のようです。

「病院らしくない病院」を目指す藤東クリニックでは、厨房の設えにも心を配っています。道具の佇まいまで美しく――それも、お食事を楽しみにしてくださる皆様へのおもてなしです。
いつか、この厨房の味を
雷干しのらせん、地穴子の包丁目、昆布の上の魚たち。今月ご紹介した仕込みの数々は、御祝会席「葉月」と毎日のお食事になって、お母様のテーブルに届いています。舞台裏を知ってから見る一皿は、また少し、味わいが深くなるかもしれません。
藤東クリニックでのご出産を考えられている方は、この厨房が仕上げる「おいしい時間」も、どうぞ楽しみにいらしてください。
▼この厨房から生まれた今月のお料理
ほおずきの灯りとともに、新しい命を祝う ― 2026年 葉月 御祝会席
【2026年8月】暑さに負けない、やさしいごちそう。Porte Bonheurのお食事
▼先月の調理風景はこちら
夏空に湯気ののぼる厨房から。










