月見団子に稲穂を挿す、秋の厨房から。藤東クリニック「Porte Bonheur」長月の手仕事と調理風景
ふだんは見えない、「おいしい」の舞台裏へ
テーブルに並ぶ美しいお膳の、その一歩手前。広島県府中町の産婦人科・藤東クリニック併設レストラン「Porte Bonheur(ポルト ボヌール)」の厨房では、今日も朝から、まな板の音と出汁の香りが立ちのぼっています。9月の厨房で仕込まれていたのは、十五夜にちなんだ長月の御祝会席。ふだんはなかなかご覧いただけない調理の舞台裏を、今月もご紹介します。

「幸福の扉」の、その奥で
Porte Bonheurは、フランス語で「幸福の扉」。ご出産を終えたお母様の御祝会席から、毎日のお食事、3時のおやつまで、当院の「食のホスピタリティ」はすべてこの厨房から生まれます。食の安全安心をモットーに、その季節にいちばん美味しい食材を厳選し、一皿ずつ手仕事で仕上げる——産後のお身体の回復を支える大切な医療の一部として、私たちは「食」に本気で向き合っています。
ステンレスの厨房に、長月の活気
磨き込まれたステンレスの調理台に、白いお皿とトレーがずらり。白衣にベレー帽の料理長が、長い菜箸を手に、真剣な眼差しでひと皿ずつ盛り付けていきます。背後では、スタッフがそれぞれの持ち場で黙々と手を動かし、厨房全体が静かな緊張感と活気に包まれています。手前のバットには、こんがりと焼き色のついた秋の野菜たち。御祝会席の「秋の山」が、ここから組み上がっていきます。


手仕事のクローズアップ
満月に、稲穂を ― 百合根の月見団子。 黒と朱の八角の器に、鶴の蓋物と魳(かます)の棒寿司。そこへ、ほくほくの百合根を丸めた月見団子を、そっと手でのせます。小さな緑のうさぎを添えたら、最後に稲穂を一本、箸でまっすぐに。器の中に、十五夜の景色ができあがる瞬間です。



奉書に見立てて ― 巻物の仕上げ。 まな板の上で、白く巻いた一品をピンセットで丁寧に整えます。切り口をきれいに、形をまっすぐに。前菜の小さな一品にも、指先の集中が宿ります。

秋の野菜を、香ばしく。 バットに並ぶのは、焼き色のついた舞茸、輪切りのさつま芋、皮がはじけた焼きミニトマト。香ばしさを引き出した秋の野菜が、お皿の上で「秋の山」の彩りになります。そばには、照りのあるたれのボウル。ひと刷毛ごとに、味の奥行きが重なっていきます。


オーブンの中の秋 ― 柿グラタン。 白いココットがひとつ、オーブンの中でこんがりと色づいていきます。旬の柿をグラタンに仕立てる、御祝会席の遊び心あふれる一品。焼き上がりの香りが、厨房にふわりと広がります。

土鍋のスタンバイと、器の支度
コンロの上には、飴色に艶めく土鍋。秋刀魚みぞれごはんを炊き上げる、あの土鍋が出番を待っています。調理台には、染付や朱の小皿、白い蓋物が整然と並び、料理長が器をひとつずつ選んでいきます。お食事のあとには、白いカップをひとつずつ、人の手でていねいに。器の支度から片付けまで、細やかなところまで手仕事です。



見せる厨房に、つまった想い
ダイニングのカウンターから、ガラス越しにのぞく厨房。手前にはコーヒーミルと木の小物、そして季節の設え。「病院らしくない病院」を目指す藤東クリニックでは、厨房もまた、皆様にお見せできる大切な空間です。清潔さと美しさを保つことが、安心して召し上がっていただくいちばんの土台だと考えています。

いつか、この厨房の味を
稲穂を挿し、柿を焼き、土鍋を火にかける——長月の厨房から、今日も心を込めたお膳が生まれ、お母様のもとへ届けられます。藤東クリニックでのご出産の際には、この厨房が仕上げる「おいしい時間」を、どうぞ楽しみにいらしてください。
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